月の雫 -君と歩む彼方への道-
「いくら魔道に秀でているからといって、魔道士は女のする仕事じゃない。

しかも、こんなに美しいんだ。

女としての幸せを、追求したいとは思わないの?」


奇妙な、からかうような調子で。

レイジュラは言った。



(何言ってんだ、レイジュラは)



「シレンとの同室はいやで、わたしと同室になりたいと大僧正に申し出るがいい。

おまえの言うことなら、きっと聞くだろう。


そうしたら、女だってことは誰にも言わないであげる。

協力もしてあげよう。


ここを追放されたくなければ、わたしの言うことを聞くんだね」


言ってることとはうらはらに、ずいぶんやさしい、なめらかな声。



(追放だって?)

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