月の雫 -君と歩む彼方への道-

1.突然のできごと

「おい、大丈夫か」


その日も、オレはいつものように、うなされているシルヴァイラの細い肩をそっと揺さぶっていた。


いつもなら、そっと揺さぶればそのうち起きていた。


しかし。

今夜はいつもと違って、シルヴァイラは全然目を醒まさなかった。



「うそだろ……だれか、うそだと言ってくれ……」


額にびっしり、玉のような汗をかいて。

その妖精のような繊細で美しい顔に浮かぶのは、ゆがんだ苦悶の表情。



毎晩のように、一体何をこんなにうなされてるんだ。



オレは苦しげな顔を見つめながら、毎度のようにシルヴァイラの苦しみに思いをはせていた。
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