月の雫 -君と歩む彼方への道-
「バカ……何をする」


弱々しくオレの胸を押しのけると。

涙をぬぐいながら、いつものかすれ声でシルヴァイラは言った。


「やめろ。離せ」

「離さない」

「ご法度だろ、ここでは、そんなこと。

いくらぼくでも、それくらいは知ってる」

「構うもんか」

「やめろ、また記憶を消さないといけなくなる。

言ったろ、おまえの記憶を消すのは面倒なんだ」

「なら消さなくていい」

「よせったら。

ぼくはおまえなんかに……興味はないんだ」

「いいよ、それでも。

オレはシルヴァイラが……好きだから」


オレはもう一度、シルヴァイラに軽く口づけた。
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