月の雫 -君と歩む彼方への道-
「ばか、よせ。

そんな気持ちも、消してやる」

「それはやめてくれ」


オレは笑いながらそう言うと、シルヴァイラをそっとベッドに横たえた。

月の雫のような髪を指でくしけずる。

銀の髪がきらきらと波打って扇状に広がる、絵のようなその姿。


「ばか。

長い間、修練を積んできたんだろう?

ぼくなんかのために、おまえの将来を棒に振るな」


涙のあとを頬に残したまま、唇を噛んで目をそらす。

そんなシルは、胸を打つほど美しかった。


「気にするな。

なに、そんなに重大なことじゃないよ」

「……?」
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