月の雫 -君と歩む彼方への道-
心配と非難のないまぜになった声。



「じいさん。

オレは何と言われてもいいんだ。

自分のしたことで階級がどれだけ下がろうが、まったく後悔はない」


きっぱり言うオレに。


「やはり何か心当たりはあるんだな」


老いた目で、じろりとオレの目を覗き込む。


「……」

「まるで、一度死んで生き返ったかのような状態だぞ、おまえは」


(やっぱり、あれがよくなかったのかな)


一度止まってしまった心臓。

信じられないような痛み。

狭まる視界。


あれは多分、本当の死すれすれだったんだろう。

いまだに心臓のあたりが重いし。
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