月の雫 -君と歩む彼方への道-
(……かわいそうだな、こいつ)



その哀れな姿に。

オレは何だかひどく悲しくなった。



こいつ、さっきまで、シルヴァイラにすりすり首をこすりつけていたのにな。


いくら仮の生命体とはいっても、こいつにはこいつの思いがあるんだ。

こいつが一方的な「悪」では、決してないんだよな。



「あいつ、まだ生きてるぞ!」

「とどめをさせ!」


いきり立つ研修生たちの声に、オレはハッと我に返った。



(もういいじゃないか――)


勝負はついてる。


オレは、やつらを止めるために、立ち上がりかけた。



と、そのとき。



「待ってくれ」


静かなかすれ声がした。
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