月の雫 -君と歩む彼方への道-
小さくかすかに響いた声だったのに、研修生たちは一斉にしんと静まりかえった。



――シルヴァイラだ。




シルは、足をひきずるようにとぼとぼと歩いてくると、トカゲ野郎の頭の横にひざまずいた。

その頭にそっと手を当てる。

ひどく細い手首を袖からちらりと見せて。


それは、とても愛情をこめたしぐさに見えた。



のたうち回っていた怪物が、急にしゅん……とおとなしくなり、赤い目すらやさしげになったように見えた。




そんなシルをじっと見ていたら。

じわじわと心の中に”悲しみ”が流れ込んでくるのに気付いた。



(シル――おまえ……)



……泣いてるのか?



シルヴァイラの表情は、フードに隠されて見えなかったけど。



あいつ、きっと泣いてる。
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