月の雫 -君と歩む彼方への道-
シルヴァイラはたしかに強力な魔道の使い手で、その殺傷能力は想像を絶する。


――だけど。


仮の魔物にすら、いちいち情をかけて。

そんな繊細な心で、実際の魔物なんて、倒せっこない。


もちろん倒せることは倒せるだろうけど、シルヴァイラ自身がひどく傷つくだろう。



(――おまえ、ここにいる意味、あるのか?)


シルヴァイラが望んでると言った、「力を消すこと」なんて、ここでは無理だ。

なんせ、そんな発想は全くないんだから。




国のために戦う魔道士を作るこの研修所。



ここほど、シルヴァイラにそぐわない場所はないんじゃないのか?





立ち上がってざわめいていた研修生たちも次々に席に着いて、場の混乱はおさまりつつあった。




(それにしても、どうして戦闘エリアのシールドが――?)


長老が作ったシールドだ。

そう簡単に破れるヤツはいないだろ――

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