月の雫 -君と歩む彼方への道-
「年がわからないだって?」


何だそれ。

そんなことって、あるのか?


「自分が生まれて何年経ったかなんて、知りやしない。

おそらく、おまえと同じくらいだろうけど」

「いつ生まれたって記録とか、ないのか?」

「ない」


あっさりと即答する。


「そんなことって……あるのか?」

「だれもが自分の生まれた日を知ってると思うな」


イライラとした声が、その形のよい唇から漏れ出る。


「年のことなんてどうでもいい」


面倒そうに手をひらひら振ると。
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