月の雫 -君と歩む彼方への道-
「……笑うわけないだろ」



いつものほほんとして陽気なルカが、こんな苦しみを抱えてたなんてな。

ルカとは最初から気が合って、よく一緒に昼飯を食べたり話したりしてたのに。


――オレはこれまで、何も気付かなかったよ。



「……ルカ、おまえ、よくここに来れたな」

「実はさ。

大僧正がぜひここへ来いって、家まで来て説得してくれたんだ。

母さんもさすがに大僧正を前にして、だめとは言えなかった」


ルカはニッと笑う。


なるほど、じいさんが親を説得しに行ったのか。


じいさんは後進の教育に熱心だ。

見込みのある奴には、ここに入る前から目をつけてるからな。


オレはうなずいた。

実はオレもそのクチだ。


「けど、母さんは最後までオレが自分から”行かない”って断る、って思ってたみたいでな。

オレが行くと言ったら”この裏切り者!”って、それはそれはひどくののしられたよ。

出ていったヤツはこの家に帰ってくるなとか、金を遺さないとか」

「……」
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