月の雫 -君と歩む彼方への道-
(……落ち着け、シルヴィ)


どうしよう?


今すぐ走って部屋に向かっても、入り口は裏側だし、かなり時間がかかるぞ。


オレは、目の前にそびえる荘厳な建物を見上げた。

シルヴァイラのいる部屋ははるか上だ。



(そうだ)


オレはいいことを思いついた。


(よし。シル、窓から飛べ!)

(無茶言うな。ここは5階だぞ)

(大丈夫だ、オレは重力を多少なら扱える)

(……)


返事はなかった。


――シル、オレが信頼できないか?


オレは祈るような思いで、レイジュラとシルの部屋の窓をただ見つめていた。



(シル……レイジュラを死なせるなよ)


傷つくのはおまえ自身だから。
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