月の雫 -君と歩む彼方への道-
「……おい」


耳元であきれた声がした。


「いつまでこうしてる気だ。離せよ」

「すまん」


顔を赤らめながら、かがんでシルヴァイラをそっと地面に降ろしていると。



シルヴァイラが飛んだ同じ窓から、もう一つの影がひらりと飛んだ。


(!?)



その影は軽やかに舞い、地面に降り立たずに、少し高いところでふっと止まる。




――レイジュラだ。




「面白い」


空中にとどまったまま、黒い髪を風になびかせて。

レイジュラはその美しい顔をゆがませて、くっくっとくぐもった笑い声をたてた。



「シレン。

その女が欲しければ、わたしと戦え」
< 235 / 288 >

この作品をシェア

pagetop