月の雫 -君と歩む彼方への道-
さほど大きな声を出しているわけじゃないのに。

レイジュラの声は雷鳴のようにあたりにとどろきわたった。


「……何だって?」


さっと立ち上がるオレに、シルヴァイラの声が間髪入れず心に差し込んでくる。


(挑発に乗るな。

今のおまえじゃ、レイジュラにはかなわない。

怪我するだけだ)


(だって――)


「女だって?」

「見ろ、あいつ、女だ」

「女だ!」


(――?)


ざわざわとしたざわめきが聞こえてふと横を見ると。

窓という窓から研修生がわらわらと顔を出して、シルヴィを指差していた。


「女だ!」

「あいつ、女だぞ!」

「見ろ、あの髪――!」


あっという間に全体に広がるざわめき。
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