月の雫 -君と歩む彼方への道-
(みんなの記憶を消せばいいだろ)


頭に直接響いてくる、怒ったような声。

なぜかオレは、それに声を出して答えてた。


「何言ってんだよ。

全員の記憶を消して回るつもりか?」

「……」

「シルヴィ、おまえ……ここに残りたいのか?」

「……」


シルは無言で顔を背けたままだ。


「この研修所には執着してないんじゃなかったのか?

そもそもおまえ、ここにいる意味あるのか?

おまえの求めるものが、ここにあるか?

ここに、何を期待してる?


――おまえ自身は一体、どうしたいんだよ?」


「……」


シルヴァイラは、目を伏せたまま何も答えない。


唇を噛んで、まだオレに怒ってるように見える。



と、そのとき。
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