月の雫 -君と歩む彼方への道-
「まさか、心が読めるようになったのか?」

「……」


オレは肩をすくめた。


「どうやらそうみたいなんだ。

それに、シルとは、声を出さなくても会話ができる」


「なん……だって?

遠話ができるのか」

「ああ。

シルヴァイラに教わって、何とかできるようになった。

最初は苦労したけどな」


「……」



じいさんは、何か考え深げに、オレたちふたりを長い間じっと見ていた。




しばらくして、何か言いかけたじいさんを、シルはそっと手で制すと。

その金の瞳で横のオレをちらりと見上げて、どこか風のような、ふわりとしたかすかな微笑を浮かべた。



(……?)



そして、いつもよりしっかりした声で、きっぱりと言った。
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