月の雫 -君と歩む彼方への道-
「国の統治や戦争も重要だが、国民のひとりひとりが幸せであって初めて、国は豊かになれる。

この国はそういったことを今まで軽視しすぎた。


レイジュラのことも……

あまりに優秀すぎて、そつがなさすぎて、あの男の内面の苦悩にわしらは気付いてあげられなんだ。



――おまえたちには、わしは期待しているんだよ」


「ありがとう、じいさん」



レイジュラは数日間の謹慎を経て、予定通り中央の重要なポストに就いたらしい。

研修所内で起こした決闘さわぎが、レイジュラの輝かしい経歴に傷を付けることはなかった。



「こないだレイジュラに会った。

おまえに会いたがっていたよ」

「そうか」


オレはにっこり微笑んだ。


「おまえのおかげで、自分が変われそうだって。

見たこともないような晴れやかな顔をしてそう言っていた」


じいさんも、顔をしわだらけにして微笑んだ。
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