月の雫 -君と歩む彼方への道-
オレは思わず、小刻みに震えるシルヴァイラの細い手を、両手できゅっと包み込んだ。

シルの手はひどく冷たかった。


「大丈夫。

みんなが好きだって、シルの素直な気持ちを伝えればいいんだよ。


……確かに、村の人たちはシルを非難するかもしれないよ。

でも、それはしょうがないことだよ。

起きたことは変えられない。


精一杯、心を込めて、こっちの気持ちを伝えるんだ。

あのとき伝えられなかった、シルの思いをね。


……それで伝わらなかったら、それはもうしょうがないよ。



――それとも、村のみんなとは会わずに行く?」


「……」


力なく、オレに手を握られたままで、しばらく足元の風にうねる草を眺めていたシルは。


やがて、顔をあげると、緊張気味に、しかしきっぱりと言った。



「いや。

長年、あやまりたいってずっと思ってきたんだ。

ここで怖じ気づくなんて……

ぼくはみんなにあやまりたい気持ちより、自分を守る気持ちの方が強いんだな」
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