月の雫 -君と歩む彼方への道-
「あの子――シルヴァイラが心を閉ざして人との関わりを嫌がるのは、他人との感応力が高すぎて疲れてしまうのかもしれない。

そのうちコントロールするすべを身につけるだろう。

今は大目に見て、そっと見守ってやるがいい」


見守ってやれって……


オレ、思いっきり格下なんだけど。



じいさんはふっとオレから視線をそらして、窓を見た。

雲ひとつない青い空が見える。


「あの子はどうやら、これまでの人生でずいぶんつらい思いをしてきたようだ。

心をブロックするすべを知っておるし、何があったのかわしらにすら読めないがな。

あの子がああなのは、そのせいもあるかもしれない」


じいさんの目が、ふたたびオレの上に落ちた。
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