月の雫 -君と歩む彼方への道-
「おい、どうすんだよ……」


小声でシルヴァイラに話しかける。



ふと、視界のすみっこに、興味深げにシルヴァイラをじっと見つめるじいさんが映った。


(くそ。試してるな――)



いまいましいくそじじいめ。



「そのままそうしていろ」


シルヴァイラはそっけなく言うと、一歩前へ出て、フードを少し上げて怪物をじっと見上げた。


(どうするつもりだ?)


しばらく怪物を眺めていたかと思うと。

いつか見たしぐさで、ひとさし指をくるりとめぐらし、手の平を上にあげた。

どこか祈るように目を閉じて、細い眉をわずかにひそめる。
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