月の雫 -君と歩む彼方への道-
女だと知らず。


自分の年さえ知らず。



毎晩のようにひどくうなされて。




「勝手に愛称で呼ぶなって言ったろ」


こっちの感傷をぶち壊す、氷のように冷たい声。


こ、こいつめ……



「答えてもムダだ。

どうせ記憶を消すからな。


……さあ、ぼくの目を見ろ」


「ちょちょっちょっちょっと待て!!」


オレは必死に手を振った。

勝手に記憶を消されるなんて、たまったもんじゃない。
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