月の雫 -君と歩む彼方への道-
「カンベンしてくれ。

女だなんて誰にも言わないから。

だから、記憶を消すなんて、やめてくれ」


オレの必死の懇願にも、シルヴァイラは冷たく言い放った。


「おまえの心は垂れ流し状態なんだ。

少しでも心を読めるやつなら誰でも気づく」


(くそっ)


オレは、シルヴァイラの金の瞳を見ないように、かたく目をつぶった。

見ただけで術にかかりそうな、不思議な金の瞳から逃れるために。


こんなのが効果があるのかさえ、わからないけど。


「人の記憶を消すなんて、人権侵害だ!」


思わずこぶしを振り回して抗議するオレに、目を閉じた暗闇の向こうから、あきれた声がした。
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