月の雫 -君と歩む彼方への道-
「わしがあの子を見かけたのはな。

ここから南へ行く途中の、ある少数部族の村だった。

ちょうど村で一服しているときに、通りであの子を見かけたのだ。


あの子は乞食同然だった。

ぼろをまとって、家もなく、あてどもなくさまよっていたらしい。


あの金の瞳と銀髪は、その部族ではどうやら悪魔のように思われていたようでな。

あの子は大勢の子どもたちに囲まれて、石を投げられていた。

服には、それはそれは、あちらこちらに血がべっとりとにじんでいたよ」


「……」


「ひと目で、強大な魔力の持ち主だということがわしにはわかった。

石が当たらないように跳ね返すことなど、わけもないことのように思えた。

なのに、あの子は石が当たるままにして、ただ体の痛みに耐えていた。

何の抵抗もせずにな。

その村を出もせずに」
< 85 / 288 >

この作品をシェア

pagetop