天使のような微笑で
 あまり長い時間二人でいる事はまずいという話になり店を出た。

 シュウは超売れっ子アイドルだ。
 俺はロック歌手で、デビュー当時はロック界のアイドルだとか王子だとか言われていたが、元はビジュアル系。

 しかも、シュウの足元にも及ばない。

 ジャンルも違う。

 そんな二人が同じ事務所だと言っても接点はほとんどない。
 珍しい組み合わせで、知らないうちに注目を浴びていた。

 聞かれちゃまずい内容だっただけに、撤収してきた。
 
 TVに出る機会が増えてきたといっても、まだ電車やバスに乗って事務所まで通っている俺。
 
 携帯のメールをチェックしながら、駅まで歩いて行った。

 彼女のブログが気になってサイトにつなげる。

 相変わらず下を向きながら携帯をいじり、視界の隅に入る人影をよけながら歩く。

 世間に顔が知られてきたからと言っても、俺が芸能人だなんて事誰も気付かない。
 
 そんな都(まち)なんだ。

 ここは。

 他人の事なんて知ったこっちゃない。
 自分の事で精一杯。

 だから余計に

「頑張って下さい。私も頑張ります」

 と言う言葉が嬉しかったのかもしれない。

 心に響いたのかも。
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