天使のような微笑で
「俺の方が騙してるのかも・・・。」

 落ち込んじゃうよ。

 いっそ正体バラしちゃうか?
 けど・・・。

 拒否されたら?

 その前に驚くか?

「う~ん」

 控え室の鏡の前。
 うなる。
 鏡の中の俺は何か難しそうな顔をしている。
 
 こんなに悩むのは音楽を作る以外ないのに。

「どうしたんですか?」

 たまたま衣装を抱えて入ってきた女性スタッフに声をかけられた。

「えっ?」

「難しそうな顔をして何か悩みですか?」

「あ~あ。いや~」

 ごまかすために忙しなくブラシで髪をとかしてみた。
 
「今日は何だかおかしいですね」

 衣装をハンガーにかけ、掌でなでながら形を整え直す女性スタッフはクスクス笑っている。
 
「・・・もしも、もしもの話だよ?」

「はい?」

 衣装から視線を外し、こちらを向くから鏡の中の俺と視線が合う。
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