天使のような微笑で
 午後から仕事だと言っても県外だから、昼前には家を出る。
 
 事務所でマネージャーと待ち合わせ。
 スタッフ数人とバンに乗り込み、イベントに参加するため都内から二時間離れた場所へ移動する。

 車内で軽く打ち合わせをして、後はとりとめない会話。

 そんな時間を過ごしながらも、頭の隅っこでは夜の予定を立てていた。



 今朝のメールが最後のチャンスなんじゃないかと思った。

 このメールに対して、俺の立場とか彼女の立場とか、そんな事を考えて躊躇していたらこの先仕事も上手くいかないんじゃないか。って。
 大げさかもしれないけど、それくらいの気持ちだった。

 だから、

「都内に戻ったら連絡する。だから、俺と会って欲しい」

 そうメールした。
 彼女からのメールは読んだが読んでないフリ。

 迷っている態度があからさまに分かる返事。
 それを無視して出かける支度をした。

 会わなくちゃ何も始まらないんだよ?



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