秘密のカンケイ

振り返った先にはあり得ない人がいて、驚きが隠せないように自然と口元に手が動いた。



なんで…

なんでここにいるの。




そこではっとした。

可奈さんとの会話。



“優斗もその日、出張なんだって。学会があるみたいで”


一緒に暮らしてた1年間にも学会があって、大抵土日に跨いでた。

まさか、明日だけじゃくて今日も学会があったんじゃ…


この近くで学会なの?




「ホントにさくらか?」


や、だめ!

せっかく隠し通してきたんだから。


今、会ったらダメ。




手が震える。

足の力が抜けてくる。


身体中の熱が冷めていく。

芯から冷えていく感じがする。



ダメなの。

今はホントにダメなの。



まだ優斗が茜を好きって認められない。

その言葉も聞きたくない。



砂が摩れる砂利音とともに少しずつ少しずつ後ろに下がっていく。


優斗…

ごめんね。



優斗が一歩前に出たとたんに後ろに踵を翻して全速力で走った。

優斗につかまらないように。

ビルの間を抜けて、路地裏の狭くて地元民しか知らないような道を走り抜ける。



溢れ出す涙が目の前をぼやかしていく。


「止まってよ~」


どうしようもない気持ちを涙にやつあたりする。


優斗


優斗


優斗!!!!



心がこんなに叫んでる。

求めてる。


求めてしまう。



好きなんだ。


優斗が好きなんだ。


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