秘密のカンケイ
でもこんな最中でも考えるのはさくらのこと。

さくらの表情に、さくらの声。

茜に重ねてさくらを脳内で思い出していた。

―――――…

「ありがとう。これで最後にする」

シャワーを浴びた後の茜がなんだかすっきりしたような表情で向き合ってきた。

「ありがとう」

素直になれる。

「…さくらは一途だから、もう他の女の子に見向きしちゃダメだよ」

そう釘をさされていたとき、部屋のインターホンが鳴った。

さくらはいつも連絡してから来ていたから、まさかなんていう想像なんて微塵もなかった。

だから、シャワー後の茜がインナーの部屋着で廊下をウロウロしてようとどうでもよかった。

「はい…」

した後の気だるさでドアに向かうものめんどくさい。

ドアをゆっくりと開けると、目の前には思いもよらぬ人物に驚愕した。

ヤバいなんて、そんなこと思う時間すらなかった。

廊下を歩いていた茜の姿を思い出す。

でも、もう何もかも遅かった。

さくらに見られてしまった。

「―――――…そうじゃないかなってなんとなく…」

小さく呟くさくらの声は俺には届かなくて、

「最低!!!!」

怒涛の声と共に左頬に平手打ちが届いた。

「…っ」

「さよなら!」

それっきりだった。

それからメールも電話も繋がらず、家で待っていても会うことはなかった。

世界が色を失った。

俺の世界はさくらでいっぱいだったことに失ってからもう一度再認識した。

そして、茜も俺のもとから離れた。

俺がもう終わりにしようと頭を下げた。

誰も傍にいない状態。

でも、茜はきっと俺から離れてた。

さくらに見つかってしまったとき、さくらがいなくなった後で泣き叫んでいた。

さくらの名前を何度も呼んで。

茜はさくらの親友だった。

「わたし、…友達だったんだなって改めて思った。もう、さくらと会えないのかな…」

茜はさくらが大事だったんだ。

俺も茜もさくらを裏切り、さくらが離れていった。

俺たちは孤独だ…

ただ一つ願うこと、さくらに会いたい、それだけだ。

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