秘密のカンケイ

そう言われたら、秘密にするしかなくなるじゃない。

さくらちゃんは狡いな。

わたしの性格ちゃんと見抜いてる。ダメって言われると突き進んじゃうけど、離れるって言われると無視できなくなる。

「わかった。だけど、ちゃんと連絡してね?メールしたらちゃんと返してね?」

『うん。じゃ、これから仕事の面接入ってるんで』

そう言って笑って通話をさくらちゃんから切った。

わたしがさくらちゃんと連絡をとってるのは秘密。

だから、優斗にさくらちゃんのことを聞きたかったけど、自分からは聞けなかった。

優斗がさくらちゃんの出ていったことを言ってくれたのは1週間後のことだった。

それまで優斗が何をして何を考えていたのか分からないけど、きっと探し回ってたんだと思う。

それの証拠にこんなに優斗の疲れきった表情を見るのは初めてだった。窶れたようにも見える。

あの時の電話でさくらちゃんは、優斗が好きなのは今でも茜っていう子だって言ってたけど、違うんじゃないかな?

確かに茜っていう子と別れた時の優斗は荒れてた。やけ酒飲むし、口も悪いし、最悪だった。

だけど今はそんなことも出来ないほど精神的に参ってる。

こんな優斗は初めて。だから、優斗はきっと、ううん、絶対にさくらちゃんのこと好きなんじゃないかな?

「さくらが…、出てった。連絡、ない?」

そう話す優斗の声には覇気がなくくたびれたお爺さんのようなしゃがれた声だった。

「…ない。あの時、さくらちゃんに勝手にしろって言ったのは優斗じゃん。あの時止めてたら、さくらちゃん出ていかなかったかもしれないのに!」

そう責め立てるのにも理由があった。優斗の本心が知りたい。優斗はさくらちゃんのことどう思ってるの…?

「さくらは出ていかないって思ったんだ。好きって言ってくれてたし。だから、突然のことすぎて頭がついていかない。…さくらに戻ってきて……、ほし」

ここでわたしがさくらちゃんの居場所を教えてもいい。

だけど、それじゃさくらちゃんの約束を破ることになるし、優斗にさくらちゃんを見つけてほしいって思う。

さくらちゃん、やっぱり優斗はさくらちゃんのこと好きだよ。

でもこんなこと言っても半信半疑だろうからいつかきっと運命の元に再会してその目で耳で確かめてよ。

わたしはそれまで秘密として心にしまっておくよ。

さくらちゃんの居場所も、優斗の気持ちもね。

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