秘密のカンケイ
なんでこう、気づきたくないことばかり気づくんだろう。
写真たてだって、赤いマグカップだって。
部屋を見渡さなければ写真たてだってきづかなかっただろうし、写真たてに気づかなかったらマグカップのことだって不思議に思うかもしれないけど、ただの来客用のものって決めつけていたかもしれない。
だけど、気づいてしまったら、気づく前には戻れなくて、まるで絡まっていた糸が解れるように一本の線で結びつく。
頭の中でマグカップと写真の女の人のことばかり考えてる。
先輩の彼女。でも…彼女はいないって言ってた。
じゃぁ、元カノってことなのかな。そうしか考えられない。
幸せそうで愛しそうな、あの写真も、先輩の部屋には不釣り合いなこのマグカップも、それで説明がつく。
なんていう名前なんだろう。
今何してるんだろう。
どんな人なのかな。
疑問に思うことはたくさんある。
でも一番気になるのはただひとつ。
今でも彼女が好きなんですか、先輩…
写真を飾っているのも、このマグカップがあるのも、まだ好きからですか。
そんな不安と心配をよそに、先輩は『シャワーしてくる』、そう行って洗面所に消えていった。
シャワーという言葉。そんな言葉さえも体がビクッと反応する。
その後の行動が分かるから。
先輩と…
ほっぺが熱くならずにはなれない。きっとリンゴのように真っ赤なのではないかとすら思える。
心臓もこれでもかってくらい高鳴っていて、中学のころに初めて全校生徒の前で討論した時よりも緊張してるのが分かる。
さっきとは違って、緊張で震える手を震える手で握りしめる。
『どうすればいいのかな?何したらいいの?』
緊張と不安から一人言までも大きくなる。