秘密のカンケイ

この部屋に一人で来るたび、わたしが寂しくなるのは先輩のせい。


奏さんが好きなくせにわたしと一緒にいるから。


わたし一人でも笑顔で迎えてくれるから。


当然のようにわたしを優しく抱くから。


わたしは寂しくて仕方がなくなる。


ドアの前でインターホンを鳴らす勇気が出ないまま立ち尽くしていると、目の前のドアがいきなり開いて、当然のように鼻からドアにぶつかってしまった。


「ーーっ、た」


「あっ、ごめん」


聞こえてきたのは驚いたような先輩の声。


まさかわたしがこんなとこにいたなんて思ってもなかったって顔してる。


ぶつけた鼻を左手でおさえながら、先輩を見つめていた。




やっぱ、好きだ。


そんな風に会うたびに思ってしまうわたしはバカだ。


愛されたいと願ってしまう愚かな自分がどうしようもなく滑稽に思える。


わたしにそんな風に思わせてしまう奏さんと先輩が時々恨めしくも思う。


なのに、やっぱり、


「入りなよ」


優しく笑う先輩に導かれるように部屋に入ってしまう。


そして、今日も、わたしは先輩に抱かれる。




先輩はわたしを抱くとき何を思っていますか?


誰を想っていますか?――――――



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