センセイ
「ミナミちゃん、ミナミちゃん」
カオリのコロコロ転がる鈴のような声で、
目が覚めた。
「クラス写真の撮影だって」
「クラスしゃしんー? どこで撮るのよ」
「校門のところだって」
「ええー? 校門まで戻るの」
カオリはうん、と申し訳なさそうにうなずく。
なんでカオリが申し訳なさそうにするんだろう?
あたしはこういうとき、なんだかイラッとしちゃう。
「もうさ、あたしバックれるから。
おなか痛いから保健室行ったって担任に言っといて」
そう言ってから、
眠ってる間に担任と副担任の発表はされたのかなア、
なんて突然気になってきちゃった。
「ネエ、寝てたからわかんないんだけど、
担任と副坦ってダレなの?」
カオリに聞いてみる。
一年間最低な教師と過ごさなきゃいけないとしたら、
それこそ本当にやってらんない。
「担任は石橋先生だよ」
「バシセンかよー! あのうるさいオヤジね。
中学で教えてもらったことはないけどさ、
高校では有名じゃん。おせっかいですぐ叱るって」
「そうだね、気をつけなきゃね。
で、副坦は緒方先生」
「緒方あ?」
そうスットンキョウな声を出した瞬間に、
突然あたしの頭を大きなてのひらがつかんだ。
「はじめまして」
「きゃっ!」
振り返ると、そこには
メガネをかけたスーツ姿の若い男が立っていた。