桜舞う月の夜に
「何か変わったこととかないか?毎日毎日、同じように過ごしてて、つまらないし、楽しくない」
「楽しくないって…。兄上は元服してもう立派な大人じゃないですか?そういつも楽しいことがあるわけないですよ」
義隆は呆れたように溜め息をつき、兄を見る。
兄より弟の方がしっかりしているように見えるのは、気のせいだろうか…?
「義隆」
くるっと隆雅は義隆の方に身体を向けた。
「はい?」
「…外行ってくる」
「……はい?」
ぽかんと口を開けて、目の前で立ち上がる雅隆を見つめる義隆。
そして我に返り、慌てて兄を止める。
「あ、兄上!こんな夜遅くに外に出るのは危険ですよ!今は物の怪が出るという噂がたっているでしょう!?」
「俺は興味ない」
「いや…興味あるとか、ないとか…そういう問題じゃないですよ!」
歩き出す隆雅の後をついて行く義隆。
「夜桜もいいだろうなぁ」
「兄上、私の話を聞いてますか!?」
呑気なことを呟きながらも隆雅は足を止めずに、歩いていく。
「…あ、忘れるところだった」
と、隆雅はいきなり足を止め、義隆はその背中にぶつかりそうになった。