桜舞う月の夜に

「何か変わったこととかないか?毎日毎日、同じように過ごしてて、つまらないし、楽しくない」


「楽しくないって…。兄上は元服してもう立派な大人じゃないですか?そういつも楽しいことがあるわけないですよ」



義隆は呆れたように溜め息をつき、兄を見る。



兄より弟の方がしっかりしているように見えるのは、気のせいだろうか…?



「義隆」



くるっと隆雅は義隆の方に身体を向けた。



「はい?」


「…外行ってくる」


「……はい?」



ぽかんと口を開けて、目の前で立ち上がる雅隆を見つめる義隆。



そして我に返り、慌てて兄を止める。



「あ、兄上!こんな夜遅くに外に出るのは危険ですよ!今は物の怪が出るという噂がたっているでしょう!?」


「俺は興味ない」


「いや…興味あるとか、ないとか…そういう問題じゃないですよ!」



歩き出す隆雅の後をついて行く義隆。



「夜桜もいいだろうなぁ」


「兄上、私の話を聞いてますか!?」



呑気なことを呟きながらも隆雅は足を止めずに、歩いていく。



「…あ、忘れるところだった」



と、隆雅はいきなり足を止め、義隆はその背中にぶつかりそうになった。


< 10 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop