桜舞う月の夜に

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隆雅の屋敷から少し離れたところに、廃れた屋敷があった。



屋敷を囲んだ築地はもう崩れかかっており、所々猫などの小さな生き物が出入り出来るような小さな穴ができていた。



もしかしたら、その屋敷は猫屋敷になっているのかもしれない。



少なくとも今は人は住んでいないだろう。



噂だと、昔この屋敷に住んでいた貴族の者たちは物の怪に襲われ全員命を落としたらしい。



まぁ…噂だが。



そんな持ち主と一緒に死んでしまったような屋敷とは違って今も尚、生き続けているものがあった。



それは桜の木。



それも立派で、美しい花を咲かせる桜の木だ。



今年もその美しい花を咲かせ、花びらを舞わせている。



隆雅は最近、その屋敷と桜の木を見つけた。



周りの者は、ここに寄り付かない。



不気味だとか、物の怪が出るとかという理由で。

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