桜舞う月の夜に
隆雅は桜の木から少し離れ、ボロボロの屋敷の簀の子に座った。
座ると軋む…。
「やっぱり、夜桜はいいな」
座ったまま桜を眺めた。
辺りは静かだ。
聞こえてくるのは風で草花を揺らす音だけ。
「ミャー」
「……」
そんな静かな空気を、小さな声が破った。
振り返ると、すぐ後ろに小さな猫がいた。
しかも黒猫。
「ミャー」
もう一鳴きして、その黒猫は隆雅の横に来て、座り込んだ。
「……」
「……」
「……」
「……」
沈黙が続く…。
野良猫のようだが、人に慣れてるみたいだった。