桜舞う月の夜に
「……」
隠れているようだが、残念なことに女が着る着物の裾が見える。
「…見えてるけど?」
その木の陰に隠れている人物に向かって、隆雅はそう言うと、その人物はびくりと身体を震わせた。
そしてその人物は恐る恐る顔を覗かせた。
「…あの…」
女の弱々しい声…。
「出てきたら?」
それを聞いた女は、おどおどと木の陰から出てきた。
「…すみません。勝手に笛の音を聴いてしまって…」
美しくて何処か可愛らしさを持った女だった。
隆雅より少し年下だろうか?
女は隆雅の側に来て、頭を下げた。
「別に気にしてない。聞こえたものはしょうがないだろう?」
隆雅は苦笑いをして、目の前の女を見た。