桜舞う月の夜に
「えっ?えっと…?」
何で泣いてるんだろう?
自分は何かこの女に不快な思いをさせてしまったのだろうか?
そんなことを焦りながら、隆雅は思っていた。
「……です」
「え?」
女は袖で涙を拭いながら、小さな声で言った。
「泣きたくなるんです…。貴方様の笛の音を聴くと…。もちろん…良い意味で…」
「良い意味で…?」
「心が救われたような…そんな気持ちになるのです」
隆雅は、頭を掻きながら
「そんなに自分の笛の音は凄いものなんだろうか?」
と首を傾げた。
「はい!」
女は、微笑んで大きく頷いた。
「そう…か」
やはり褒められると嬉しいらしい。
隆雅は少し頬を赤くした。