桜舞う月の夜に

「女人!?」



秀隆も驚いたように声を上げる。



「あら、まあ」



何だか楽しそうな清子。



「お前、女がいるのか?あれほど縁談を断っておいて…」


「……」



秀隆の質問を無視し、隆雅は無言でぎろりと隣を睨む。



それにびくりと身体を震わせる義隆。



「隆雅っ!」


「え、あー…秘密です」



そう言い何とか誤魔化そうと、嘘の笑顔を作る。



「ひ、秘密とは何だ!」


「御馳走様でした」



隆雅は立ち上がり、部屋を出た。



少しして義隆が後を追ってきた。



「あ、兄上…」


「お前な…」



隆雅は振り返り、深く息を吐いた。



「誰が俺に女がいると言ったんだ」


「じ、冗談ですよ!父上も何とか収まってくれましたし…」


「父上のことは構わない方がいいんだ。余計なこと言うな」



隆雅はいつも父と、あんな風に言い争っているので慣れていた。


< 26 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop