桜舞う月の夜に
「女人!?」
秀隆も驚いたように声を上げる。
「あら、まあ」
何だか楽しそうな清子。
「お前、女がいるのか?あれほど縁談を断っておいて…」
「……」
秀隆の質問を無視し、隆雅は無言でぎろりと隣を睨む。
それにびくりと身体を震わせる義隆。
「隆雅っ!」
「え、あー…秘密です」
そう言い何とか誤魔化そうと、嘘の笑顔を作る。
「ひ、秘密とは何だ!」
「御馳走様でした」
隆雅は立ち上がり、部屋を出た。
少しして義隆が後を追ってきた。
「あ、兄上…」
「お前な…」
隆雅は振り返り、深く息を吐いた。
「誰が俺に女がいると言ったんだ」
「じ、冗談ですよ!父上も何とか収まってくれましたし…」
「父上のことは構わない方がいいんだ。余計なこと言うな」
隆雅はいつも父と、あんな風に言い争っているので慣れていた。