桜舞う月の夜に
「…はい」
しょぼんと肩を落とす義隆。
隆雅はそんな弟に苦笑いし、歩き始めた。
部屋に戻り、昨晩のことを思い出す。
女に会ったというのは嘘ではない。
だが、あの朧という女…。
「何処に暮らしているんだろう…」
まさかあの廃れた屋敷に住んでいるわけではないだろう。
あんな人の気配がない屋敷で朧一人暮らすこと無理だろう…。
何処かの屋敷に住んでいるんだろうが…。
昨夜はたまたま、あの屋敷を見に来ていたのか?
女一人で?
疑問だけが残る。
だが、また笛を吹くという約束をしたため、後で会うことになるだろう。
別れる前、隆雅と朧は三日後の夜に、と約束した。