桜舞う月の夜に
隆雅は晴夜の前に座ると、早速用件を訊ねた。
「で、何か用か?」
「たいしたことではないよ。とりあえず、今日の運勢でも占ってみようか?」
「…は?」
「さてさて…」
もう占い始めている晴夜を唖然とした顔で見ている隆雅。
「うん…うん…今日は特に何もない平凡な日になりそうだよ。良かったねぇ」
「何が良かったねぇ、だ!ここに呼んだのは占うためか?」
相変わらず、にこにこする晴夜に隆雅は深い溜め息をついた。
晴夜は変わっている奴だ。
始終笑顔で、何を考えているのかよく分からない。
「まあまあ…そう怒らずに。…君を呼んだのは占うためではないよ」
急に声を低くして元々鋭い目をさらに鋭くし、口元を笏で隠す。
「?」
「物の怪のことで相談があるんだよ」