桜舞う月の夜に
「物の怪?」
何でまた、そんなことを自分に?と疑問に思っていると、晴夜は話を続けた。
「最近、人を殺める物の怪が出ているのは…知っているよね?」
「ああ…世間を騒がせているアレか?」
「そうだよ。私たち陰陽師の一族もその物の怪を退治しようと、今調べていてね。なかなか簡単にはいかないんだ」
流石の陰陽師も手こずる相手らしい。
晴夜は珍しく苦々しい顔をしていた。
「だけど…」
「?」
晴夜の表情が微妙に変わったのを隆雅は見逃さなかった。
その表情は何故か楽しそうだった。
「その物の怪の姿を見た者がいてね。…姿は…狐だったらしいよ」
「狐?」
狐と聞いた隆雅の頭の中では、野山でたまに見かける小さな狐が浮かんでいた。
「だけど、ただの狐じゃない。普通の狐よりも大きく色は雪のように白い、しかも尾が九ある」
「…九尾か?」
「よく分かったね?そう、九尾の狐。物の怪の中では、巨大な力を持つ存在でもある…」