桜舞う月の夜に
「…分かった。そのくらいなら、やってやる」
「良かった、助かるよ。その九尾を見つけたら報告してほしいんだ。だけど…見つけたら、すぐ逃げてほしい。君の命も大切だからね」
最後の言葉は真剣な声だった。
「では…また」
隆雅は御簾を潜り、行ってしまった。
「さて…」
隆雅がいなくなって、静かになった部屋で晴夜は目を細めて、
「どうなるんだろうね…」
口元が笑っていた…。
―――約束の夜。
隆雅は朧に会いに行くため、屋敷を出た。
月が出ていて、夜道が明るい。
九尾のことも考えながら歩いていると、いつの間にかあの廃れた屋敷に到着した。
九尾は現れなかった。
少し安心しながら、その屋敷に入っていく。