桜舞う月の夜に
黒猫の小夜が隆雅を迎えた。
「ミャー!」
「元気か?」
隆雅は小夜を抱き上げ、奥へと入っていった。
小夜は大人しく隆雅の腕の中に収まって小さな欠伸をした。
座って、桜の木を見上げた。
満開の花は終わったが、それでも尚美しく咲き誇っている。
「…綺麗だな」
そう呟いた隆雅に応えるかのように小夜は一鳴きした。
そして隆雅は小夜を自分の膝に置き、『皓月』を取り出してそれを奏でた。
笛を吹いている時は何もかも忘れられる…。
奏でている途中で人の気配がした。
それには小夜が一番に気づき、隆雅の膝から飛び降りた。
「ミャー」
嬉しそうに暗闇の中へと駆けていく。
隆雅はその方向を目を凝らしてよく見ると、そこには朧がいた。