桜舞う月の夜に
そんな朧を見て隆雅も釣られるようにして微笑む。
まだ出逢って間もないのに、彼女と一緒にいるだけで気持ちが和らぐような気がした。
だから…彼女のことをもっと知りたくなる。
「そなたは…どこの家の者なんだ?」
隆雅の問いに、朧は表情を曇らせた。
それを見て隆雅は聞かなければよかったと後悔した。
「あ…いや…別に答えたくなければ答えなくていいから…」
「…申し訳ございません…。そればかりはわたくしの口からは言えません…」
さっきまでの和やかな雰囲気から気まずい雰囲気になった。
足元にいる小夜は交互に二人を見ている。
何とか違う話題を考え、結局思い浮かんだのは…
「…そういえば、ここ京で物の怪がでるらしい」
「物の怪…ですか?」
物の怪の話…。
…元々、女がどんな話を好きなのか分からない。
物の怪の話を出したとしても、目の前の彼女は興味なんてないだろう。
隆雅はまた失敗したと心の中で溜め息をついた。
だが朧から意外な言葉が返ってきた。