桜舞う月の夜に

その青年は身なりからして、貴族の者だと分かる。



整った顔立ちで、表情は柔らかく、優しそうな印象を持っていた。



この青年の名は藤原隆雅(ふじわらのたかまさ)。



名前の通り藤原一族の者だ。



隆雅は今年で十九になる。


彼は、漢詩文、歌詠み、乗馬、弓矢など全てにおいて優秀な青年だった。



特に笛は得意としている。



彼の笛の音を聞いた女たちは虜になるとか。



しかも彼の父親は公卿である内大臣。



内大臣は左大臣・右大臣を助けて政務、儀式を執行する位。



左右大臣より位は下だが、帝の補佐をする高い位だ。



< 4 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop