桜舞う月の夜に
そのため親族の者の中にはその父親の力で出世する者もいた。
隆雅もその一人で、若い年齢にも関わらず三年前、殿上人の六位の蔵人に任命された。
若いと言っても隆雅は優秀なため仕事はしっかりとこなすので、誰も文句は口にしなかった。
そのような息子を持った親たちは隆雅の今後の出世に期待した。
だが昇格してから三年経ったのに隆雅は出世しなかった。
隆雅が、出世を拒んだのだ。
うまくいけば、もっと上の位に出世できるのに…。
隆雅は政治的なことが嫌いだったのだ。
蔵人になったのは父親が煩いから、仕方なく…といった感じだ。
隆雅は政治に関わるより、ただ自由気ままに笛を吹いたりして風流を楽しみたかった。
そんな息子に呆れかえる親たち。
何とかして政治的な方に興味を持たせたいと必死だった。