さよなら、神様
金網越しのグラウンドで、体育の授業をしていた。

華やかな声。

でも聞こえない。

あたしは、アスファルトに落ちた桜を踏みつけながら、坂を下り始めた。

生暖かい風。

一瞬

誰かに呼びかけられた気がして、校舎を振り返った。

誰もいない。

なにも聞こえない。

ここには

なにもなかった。

さよなら。

さよなら。

前を歩く父さんと母さんの背中。

あたしは言えない。

ごめんなさい、と言えない。

ただ、舞い落ちた桜を見下ろす。

あたしより弱い桜達が、バカみたいにたくさん、散っているのが愚かで。

憎くて。

踏みつける事しかできない。





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