One and Only

5.

 3/1。朝からみぞれ混じりの雨が降っていた。
 TVのニュースで都心はすっかり雪になっている風景を映し出しているのを見、

「もうこのまま暖かくなるかと思ってたけど、こんな天気になっちゃうなんてねぇ……
 あなた、本当にライブ行ってくるの?」

と、母が呆れた様子で言う。

「大丈夫でしょ、都心(むこう)でも夕方には雨になるって言っているし」

「匡弘さんに迷惑かけないように行ってらっしゃいよ」

「まったく、兄貴もおしゃべりなんだから……」

 玄関を出ると、まだ冷たい雨が降っている。
 息をするだけで、身も心も凍りそうな天気。
 いつもなら……ライブへの期待感と楽しさがあるから、こんな天気でも大丈夫なんだけど。
 きっと寒いのは天気のせいだけじゃないね……と考えながら、溶けかけたシャーベットのような道を歩く。

 駅に近づき、ふと目をやると、匡弘さんはもう待ち合わせの場所に立っていた。
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