ナツの思い出
すぐ前には車。
私は動けなかった。
固まっていた。
声も出せなかった。
このままじゃ死ぬ。
とまで思いながらも
動くことが出来なかった。
こういう時、
時間がスローに感じるというのは
本当だと思った…
そんなことまで
考える時間もあったのに。
車はゆっくりに見えたのに。
私はそのままの状態だった。
そして車に当たると思って
無意識のうちに
目をつぶっていた。
次の瞬間、
車のブレーキ音と
ドンという音がする。
痛みは…なかった。
こういう時は痛みなんて
感じないのかもしれない。
でも意識はまだ、確かにここにあった。
その時点で、きっと頭のどこかではわかっていた。