ナツの思い出
恐る恐る、目を開ける。
少し離れたところに
翔が倒れている。
何が…起こっているか
理解できない。
私は、まだ動けなかった。
ただただ涙だけが溢れてきた。
声なんて、でない。
心では理解できなくても
体は正直に動く。
それでも
近くに行ってあげることすら
できなかった。
しばらく呆然としたままいると
救急車の音が聞こえてくる。
その音を聞いて、我に返る。
そして…翔の元へ走っていた。
「翔!翔!」
と叫びながら。
当然、
答えなんて返ってこない。