ﾅﾂの思い出

翔のお母さんが
なにか言おうとしたとき、
手術中の光が消えて、
医師が出てくる。


翔のお母さんは
頬を押さえてしゃがみ込む
私の横を通り過ぎ、医師に

｢翔は…どうなんですか?｣

と聞いた。



｢…最善は尽くしましたが…
これが精一杯でした。｣

医師がそう言った後、
たくさんの機械でつながれた
翔が出てくる。


｢でも、これだけでも
奇跡だと思ってください。
助かったことが奇跡ですから。
ただ、いつまでこの状態が
続くかは…わかりません。｣


その言葉を聞き、
翔のお母さんは
私を睨み
こう言い放った。


｢あんたさえいなければ
よかったのよ!
あんたが…
翔と出会わなかったら。｣


その言葉を聞いて、

｢私が…
私が全部悪いの…?」

涙を流し続けながら
私は今にも消えそうな声で呟く。


｢そうよ!
ここから出て行って!
二度と翔に会わないで!｣


翔のお母さんはそう言って
私の腕をつかんで立ち上がらせて、
出口の方へ追いやった。

病院を出て私は泣き叫んだ。

人目も気にせずにずっと。


姫架は追いかけてきてくれて
ずっと傍にいてくれた。


でも朝まで私が泣きやむことはなかった。

｢ごめんなさい、ごめんなさい｣

と言いながら。